量子波動器は本物?怪しいニセ医学?
ガンやアンチエイジングなどに効果があると言われている新規の医療、代替医療全般はとてもうさんくさく聞こえてしまいます。
例えば話題にあがりかなり叩かれた「血液クレンジング」「にんじんジュース」「フコイダン」これらと量子波動による波動医学が違うということを以下で少しでも説明できたらと思います。
以下に、前半で「エビデンスとはそもそもどういうものなのか」後半で「量子波動器のエビデンス紹介」をしていきます。
実は「エビデンス」は簡単に悪用可能
「エビデンスがあるから大丈夫」とすべてを鵜呑みにしてはいけません。
どれだけうさんくさいものでも、大抵のものはエビデンスは作ることができます。例えば「水は薬と同等くらい腎臓へ好影響がある」というエビデンスをつくることはおそらく可能です。水を飲むことで腎臓負荷を減らしたデータ、薬を飲んだ人のデータであまり効果が出なかった人とを比較したものを「エビデンス」として作成。作成した目的としては「水は薬よりも効果が高い」と結論づけることで、そのような営業資料を作成すると、うさんくさい「腎回復水」「原材料100%水道水」というような乱暴な商売も実際に可能であり、実際にこれに類似したサプリメントなどは存在します。
他にも「エビデンス」をとったときはいわゆる「チャンピオンデータ」という最高に成果が出る状態のものであったり、ありえないくらい高濃度である場合の状態で「エビデンス」を作成し、実際に摂取するときには身体への作用としては何も効果が出ない状態のものが販売されているというのはとても多く見受けられます。
消費者、利用者が重視するのは最終的なアウトカム(成果)であり、プロセスや理論的によいかどうかは二の次であり、惑わされないようにするのは大事です。
医学的効果には「エビデンス」のレベルを確認が必須
エビデンスにはレベルが存在します。厳密にはもう少し細かくありますが信頼性の高い順にざっくり並べると、下記の画像のように分類できます。

エビデンスのレベルをもう少し細かく分類すると下記のように分類が可能です。
Ⅰ. <最も信頼性が高い>システマティックレビュー・メタアナリシス
システマティックレビューとは
簡単に言うと「徹底的にレビューを行い、偏りなどを最小限レベルまで排除した質の高い研究のみを専門家が取りまとめたもの」です。完全にバイアスや疑わしさをゼロにすることはできないとしても、それに限りなく近づけた内容のため、医学的に正しい可能性がとても高いエビデンスのことです。
メタアナリシスとは?
複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のこと
(引用元:Wikipedia)
つまり両方とも複数の専門家による厳しい目で徹底的なレビュー、分析がされたものであるから、個人や法人、その他研究機関の私見などが入ることのないようにされた研究結果であるため、たくさんの研究成果の中でも最も信頼性が高いレベルとされるものとなっています。
Ⅱ. <信頼性が高い>1つ以上のランダム化比較試験
ー例えば実験対象者を2つ以上のグループ、医療提供をするグループ(介入群)、提供しないグループ(対照群)にランダムにわけて効果を測定。さらに研究に参加する人(被験者)が実際に該当治療を受けているかどうかがわからない状態(ブラインド、盲目的試験)だと、効果があったような気がする(プラセボ効果)が除去できてより信頼性が高い試験となる。また人数が多い程、信頼性も上がる。
Ⅲ. 非ランダム化比較試験
ー2つ以上のグループを無作為(ランダム)でない状態で割り付け(振り当て)、比較を行う試験のこと。ランダムでないため、グループ間で偏りがある可能性があるためその分、信頼性が上記の「ランダム化比較試験」よりも信頼性は落ちる。
Ⅳ.<次いで信頼性が高い>コホート研究・症例対象研究・観察研究
コホート研究とは
コホート研究(コホートけんきゅう、英語: cohort study)とは分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究である。要因対照研究(factor-control study)とも呼ばれる。
(参照元:Wikipedia)
すこしわかりやすく言うと、うどんをよく食べる香川県民のGroupAとそれほど食べない山梨県民のGroupBを対象として比較し、うどんという食生活が糖尿病リスクを高めるかを研究するというようなものもこれに含まれます。
後述の症例対象研究と比較し、よく「前向き」「後ろ向き」と言われるが、コホート研究はこれから「未来」に関してのデータを取るため「前向き」と言われ、「症例対象研究」はすでにあるデータを分析するため「後ろ向き」と言われる。現時点からどちらを向いた研究なのかということでこのように言われます。
ちなみに下記の「症例対象研究」と比較してのメリット・デメリットは以下です。
■メリット
- 危険因子の寄与危険度がわかる
- 事象の発生順序がわかる
- 複数の結果因子が同時に調べられる
- 予測因子の測定バイアスが少ない(間違った結論を導きにくい)
■デメリット
- 稀な疾患に不向き
- 研究の時間と費用がかかる(そのため頻繁には行えない)
- 多数の脱落がないように追跡しなければならない
症例対象研究とは
症例対照研究(しょうれいたいしょうけんきゅう、case-control study)とは、分析疫学における手法の1つである。疾病に罹患した集団を対象に、曝露要因を観察調査する。次に、その対照として罹患していない集団についても同様に、特定の要因への曝露状況を調査する。以上の2集団を比較することで、要因と疾病の関連を評価する研究手法。ケースコントロール研究、患者対照研究、結果対照研究とも訳される。
(参照元:Wikipedia)
過去のデータを分析することで行うため、上述の「コホート研究」よりは時間もコストもかからずにできる研究です。製薬会社などもプロモーションのための資料は基本的に論文掲載しているものでないとできないので、この「後ろ向きの研究」と「査読の入っている商業誌掲載レベル」の論文でプロモーションを行うことが多いです。
Ⅴ.症例報告
上記はどれがどれか正直、医学的なエビデンスを見たことがない人からすると判断が難しいので、下記の重要な点だけ注視していただくのが一番よいかもしれません。
乱暴な言い方をすると下記の重要なポイントに該当しなければエビデンスとして、割と信頼してもいいかもしれません。
とはいうものの、注意していただきたいのは前提として「エビデンス」というものは研究が進むと、10年15年経過すると覆ることもありますのでエビデンスレベルが高いほど、覆りにくい、生活環境やその他の状況の組み合わせによっては必ずしも同じ結果とならないということも考慮には入れなければなりません。
そしてこれからが本題で以下の場合には見極めがとても大事となってきます。
これからお伝えする重要な点に関して、概要をお伝えしますと以下の2点です。
- 2例以上中でも数十人、数百人、数千人規模の事例報告で好結果であると、効果としてはある可能性◎
- 1例だけの報告は疑うべき
<効果がある可能性を示唆>2例以上の事例報告
ー1つの研究で数十人に効果があったとされるような事例報告。研究の規模として30人-50人程度で行った場合であれば効果がある可能性を示唆していて、13人に行い13人全員に効果が出た場合も効果がある可能性を示唆しているものとしてとらえることができる。
このような結果が得られたような場合は、今後この事例を拡大し、信頼性と実績を獲得するにつれて実際に上述のような「より信頼性が高い臨床研究」を行う可能性も高いため、新規性の高い研究の場合は信じるという判断をするのも正しいケースもあります。(もちろんどの程度のリスクがあるかということを見極める必要があります)
<要注意:怪しい健康食品・商材系はほぼこのエビデンスのみ>1例報告(体験談)
-多くの「騙された」「効果が全くない」などと言われるサプリメントなどはこういった事例の紹介のみです。これは「5000人を対象に行った結果、1人に効果が出た場合にその1人の事例のみを紹介する」などもできてしまうため、また、臨床研究などでかっちりと枠組みを決められていないため、本当に同じ条件で行っているかもわからず、偶然その他の要因で症状改善した人などのデータが取り上げられて紹介されることがあります。
おそらく効果がないような怪しい健康食品はこのような事例を1-3個程かかげて、「エビデンスで立証された確かな商品」などとして販売しているケースが多いです。
そのため、「見た目上とても効果がありそう、しかしとても注意が必要」となるのが「1例だけの事例報告」なのです。
Ⅵ.専門家個人の意見、動物実験や実験検査
ー 医師推奨などは医師個人のあくまで感想としている場合が多く、参考になるようなものではありません。こちらは絶対に注意が必要です。
また「エビデンスがある」海外論文を掲載しているが見てみると英語で「in vitro」と書いてあったり、[mouse][rat]などと書いてあると、実験室レベルの研究で、人間にとっての効果は不明であるにも関わらず「がんに効果あり」と結論づけて広告宣伝しているような商材もよくあります。
例えば動物でがんの発現抑制効果があったとし、しかもその事例が数例だけでも、これは人間にも効果があると結論づける、大きな論理の飛躍があるような研究報告もよくあります。
一部の健康食品では下記のような論理のみで効果あるように誤認させる形で販売しています。
-「動物でガン抑制ができた事例が数百の事例のうち数例見つかった」
⇒「がんに劇的な効果あり」
⇒健康食品として「がん抑制効果がある」として販売
もし、後日追加で研究して本当に効果がある可能性もありますが、多くの場合人間に効果があるとしても実験の設計上のサンプル適用量は例としてあげると「健康食品の体重比に対して数十グラムが必要」であるが健康食品は「数㎎の含有量」で「がん抑制効果(成分を含有している)」として販売しているケースが実際にあります。
そのため実際には対して効果がないものばかりがまるでガンに効果があるかのように販売されたり、ネットで情報として広まったりしてしまっています。
■細かい補足の参考情報
書籍で「医師推奨」「がんが治る」と紹介されているものも要注意
「書籍」を活用して訴求をしているケースもあります。これも注意が必要です。「医療広告」という枠組みでは禁じられているようなことも「言論の自由」として書籍のタイトルや文書に記載することはOKのため「がんが治る食事」のような形でその食事さえとっていれば薬以上に効果があるかのような誤解を与えるようものも少なくありません。
これはそれっぽくまた権威付けされているように思われますがあくまで「たまたま医師という職業の一個人の意見」であることには違いがありません。そのためエビデンスレベルは最下位のものと同等なのです。
少し難しい補足
少しでも分かりやすくと思い、かいつまんで説明しましたが、厳密には掲載されている論文のインパクトファクター(引用数の高い)医学雑誌のものか、ガンであればASCOで紹介されているレベルの情報か、診療ガイドラインに定義されているものか、というのはとても信頼のおけるものとなります。ただデメリットとしてはそこまでのレベルにいくには時間がかかるので、最新の医療に関してはまだそこに採択されるレベルまでいけていないものもあります。またバイアスなども考慮しなければならず例えば、研究というのは研究をしている人にとってメリットがあるものを導きたいということを目的として研究されているので、それによりメリットを享受する団体があるかなども個人として判断する場合にはとても重要です。なぜかというと製薬会社がスポンサーしている臨床試験はそうでないものの4倍もポジティブなデータになりやすかったという研究もされています( https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12775614 ) 。またヒトを対象とする調査研究はヘルシンキ宣言の精神を遵守し「 臨床研究に関する倫理指針」および「疫学研究に関する倫理指針 」に従っていなければならないとしています。
またガンの研究の場合、エンドポイントと言われる研究のアウトカム(成果)が出たかどうかの判別ポイントも重要で、一番求めるべきはOS(Overall Survival:全生存期間)であり、代用エンドポイント(効果があるのではないかと早期として判断できる材料)としてRR(Response Rate:腫瘍縮小率)、CBR(Clinical Benefit Rate:臨床的利益率)、PFS(Progression-Free Survival:無増悪生存期間)、DFS(Disease-Free Survival:無病生存率)、TTP(Time to Tumor Progression:腫瘍増悪までの期間)、IDFS(Invasive Disease-Free Survival:無浸潤ガン期間)pCR(Pathological Complete Response:病理的寛解率)、irOR(Immune-related Overall Response:免疫関連腫瘍縮小率)、TSST(Time to Second Subsequent Therapy:二次治療開始までの期間)、TUDD(Time Until Definitive Deterioration of quality of life: QOL悪化までの期間)この代用エンドポイントの場合は代用エンドポイントで出た成果とOS(全生存期間)が一致しないこともあるため、明確に効果があったと断言できるかどうかという点が難しくなります。しかし、OSまで測定することのできる研究はかなりおおがかりとなり、臨床試験にかかる費用も数億単位となり、行うこと自体もかなり困難です。
<次ページ|量子波動器・波動医学のエビデンスレベルに関して>
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